投稿日:2008-06-27 Fri
■□ 高気密高断熱化は寒さ対策から始まった □■前回の記事からさらに続きます。
高気密高断熱住宅に住んでいる人に伺うと、暑苦しいということをよく耳にします。
なぜなんでしょうか?夏季の日照からの熱エネルギーを遮断できたわけですから、室内は快適なはずなんですが・・・・。
夏季の温熱環境のことに関して言えば、たとえば人間の体であっても一つの燃焼機関なので、その熱気が建物内に滞らないよう、その廃熱を戸外に強制排気し続けなければなりません。わずかな熱量ではありますが、高気密高断熱化された建物では熱の出入りが極端に少ないので、内部で発生した熱が外へ排出されることなく内部に蓄積されてしまうのです。
矛盾するようですが快適な居住環境を維持するために、春秋の過ごしやすい季節であっても窓を閉じ機械による強制換気が必要となります。
人は「窓を開放すればいいのでは」といいますが高気密高断熱化するためには建物の熱損失の大きい開口部を極力小さく設計することが基本的な考え方になりますので、採光を得られる最小限の窓があるのみです。さらには大気の温度差が小さい時は空気の対流風が起きにくいので小さな窓を開けるだけでは換気能力が不足します。ですから都市部などにあるオフィスビルで年中空調しているのと同じ理由で、高気密高断熱住宅のメーカー展示場では四季のほとんどの期間でエアーコンディショニングしているはずです。確かめてください。
ともかく現在の断熱住宅はそういうレベルで高気密化しているわけです。住宅の高断熱化は極地の冬場の寒さ対策といった単純なものではありませんし、ある意味住まい手に負荷をかけるかなりデリケートなシステムです。
![]() | 日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク (1999/06) 赤池 学金谷 年展 商品詳細を見る 鉄筋コンクリートの建物では内断熱ではなく外断熱にすべきという、いわゆる外断熱ブームを作った書といわれる。他者がこの理論をそのまま木造建物にスライドして流布したため、誤った認識が一般に広まった。 評:太田 |
しかしながら昨今の、特に都市部の夏の暑さには本当に閉口します。
確か日本は温暖湿潤気候と学校で習ったはずですが「日本は季節的な変動のなかではすでに『亜熱帯』といっても良い状態にある」と気象庁がコメントしているぐらいですから実際相当なものです。
使い古されたフレーズではありますが、吉田兼好の「徒然草」に
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなるところにも住まる。暑き比わろき住居は、耐え難き事なり。」
という有名な一節があります。住宅を考える際によく引き合いに出される名文句です。
これは夏と冬を同時に論じたものとして秀逸だと思うのですが、これに反し高気密高断熱工法は最初、北海道などの北方厳寒地の冬の寒さ対策として発展しました。
そして正しい方法で断熱を施さないと躯体内で結露が生じ木材が腐朽するというふうに展開していきます。このあたりから工法自体が商品化されていきました。さらに省エネルギーが法的にも推奨され、高断熱化する方法として高気密工法が有効であることがあっという間に広まり、それには外張り断熱工法が一番いいらしいという少し間違った理論が一人歩きを始めるに至ったのです。我々は冬の暖を採ることが出来たわけですが、同時に夏の涼を自然から得るということを放棄してしまったわけです。
![]() | 「いい家」が欲しい。 (2004/08) 松井 修三 商品詳細を見る 「外断熱」という言葉を一般に広げた問題の書。正しくは「外張り断熱」だが、「内断熱」を不等に評価したということで賛否両論を巻き起こしている。 評:太田 |
![]() | 「外断熱」が危ない! (住宅が危ない!シリーズ) (2002/11) 西方 里見 商品詳細を見る 「いい家が欲しい」に反論する書。少し感情的な表現が目立つのが残念。「いい家が欲しい」は結局ハウスサーキット工法の宣伝本であったという「落ち」である。 評 : 太田 |
![]() | 高断熱・高気密バイブル (2000/05) 南 雄三 商品詳細を見る なぜ住宅の高断熱化が必要なのかを分かりやすく説く良本。自然派志向である南雄三氏があえて住宅の高気密化をすすめ計画換気を推奨するのは疑問が残る。 評:太田 |
エコロジーとは裏腹なエアーコンディショニングされている人工環境から、四季の移り変わりを肌で感じて暮らす生活を復活させ、そのなかで自然観を育て上げる環境を子供たちに残していくことはすごく大切なことだと思います。
講釈が多いですね。人に嫌われちゃいそうです。
具体的に例えば、こんなことを考えたりします。
誰かやらせてもらえませんでしょうか?面白そうで、わくわくしてきます。
●夏季の焼けた屋根面を冷やすために屋根上に打ち水できないだろうか?豪雪地帯では融雪設備を設けますよね。ああいう物を屋根に設置できないかと。
雨水を一時貯めておいてそれを利用しようかとも考えるけど設備を過剰にしたくはないな。花壇の水遣り配管が利用できそうだけど・・。
今年の夏休みの自由研究課題が決まったようです。
子供さんの研究課題のテーマとしてどうでしょうか?
●外壁西面の夏季の西陽除けを考える。
夏季と冬季で作用を逆転させるには植物の利用がよさそうです。西洋建築のレンガ建築では蔦をよく壁面に這わせているイメージがありますが、建物が湿気そうだし、掃除が大変そう。
愛・地球博であったような気がしますが、建物と少し離してワイヤメッシュを構築できないかな。
途中まで書きましたが、すごく面白いことに発展しそうなので次回記事へ回します。
特に屋根散水に関しては、チャレンジしている方がたくさんいるということがネット検索で分かりました。
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コバヤシ建築の「木の家」 【www.kigumix.com】では建築画像をどっさり公開中 
投稿日:2008-06-26 Thu
■□ 高気密化について懐疑的な建築家が多い □■先日の記事では、夏の強い日差しで妬けた屋根から室内に放射される熱を遮るためには板状の高性能断熱材を使い、屋根面の裏側に通気層を作ることによって煙突効果で外へ廃熱するのが、今現在の住宅建築において主流をなすであろう方式であり、これにはコストと手間が掛かるということをお話しました。
今回記事では、もう少し突っ込んで高気密高断熱の話をしますが、これは非常に微妙で繊細な話になります。もしかすると、賛同いただけない場合もあるかと・・・。でも誤解を恐れずに話してみたいと思います。
実は高断熱化の鍵は建物の高気密化にあります。
建物の高気密化を追求するというのは非常にテクニカル的なことで、断熱層を建物の構造の外側に設ける外張り断熱工法を採用し、隙間を作らないよう丁寧に作業していけば、一定の気密性能を実現することが出来ます。非常にシンプルな方法論で実現までの方向性が容易にイメージできるわけです。ここに落とし穴があります。私も現場マンとして高気密高断熱化を建築的に追求してみたい時期もありました。
しかしながら、住まい方とか、環境のこととか、子供たちの将来のこととか、より自然に生きて死んでいくこととか、いろんなことを考えてみると住宅の高気密化に関しては懐疑的にならざるを得ないのです。
■□ 高気密高断熱住宅は暑苦しいというのは本当か □■
友人からのメールにもありました、三井ホームなどは2*4パネル構造で基本的に高気密化しやすいので、三井さんに限らず2*4系のハウスメーカーは一般的に高気密高断熱を販売の売りにする傾向があります。
高気密高断熱住宅では
●通年して生活エリアの温熱環境が安定させることが出来る
●建物内部で部屋による温度差が少ない
●冷暖房コストが小さい
●躯体内の温度差が小さいので結露が起こりにくく湿気による木部の腐朽が起こりにくい
などいいことづくめのようですが、一般にいわれる高気密住宅レベルを実現するためにはビニールシートで建物を覆ったり、釘穴を気密テープで塞いだりする必要があるほどで、これらの建物は機械による計画換気を前提としています。すなわち1年を通して機械的なフレッシュエアーの供給や温度管理をしなければならないといったデメリットがあるということを意味します。分かりやすくいうと魔法瓶の中で暮らすような感じです。特に夏場、一度建物内に蓄積された熱を排出するのは容易ではありません。
日本では四季のうつろいが豊かであることは自明なのですが、そもそも夏の暑さ対策と冬の寒さ対策を両方満足するようなしくみを考えるのは非常に難しいことです。両刃の剣なのです。
高気密高断熱化は消費者にとっても非常に魅力的で訴求力のあるアイデアですが、もう少し落ち着いて考える必要がありそうですね。
次回の記事では高気密高断熱住宅について、さらに掘り下げてみようと思います。
高気密高断熱化の他に方法はないのでしょうか?一緒に模索してみましょう。
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コバヤシ建築の「木の家」 【www.kigumix.com】では建築画像をどっさり公開中 
投稿日:2008-06-23 Mon
■□ 屋根断熱には高性能の断熱材と通気層を設けるべし □■住宅展示場を回遊して住宅を研究している友人からメールを頂きました
> ●●ホームは全館冷暖房設備を導入しており、高断熱化の一環として
> 屋根下に(各種メーカが最近採用しているらしい)発砲スチロールのような
> 断熱材を標準で組み込むとのこと。
> たしかによい天気ではありましたが、とても涼しい屋根裏でした。
当社だって負けてませんよ。
一般の方が夏の盛りに屋根へ登る機会はそうめったにないと思いますが、本当に目玉焼きが出来るのではないかというほどの温度になります。諸条件がそろうと屋根面の温度は恐らく90度くらいまで達しますが、この自然エネルギーを太陽熱温水器では水からお湯を沸かすエネルギーに利用しているわけです。理屈では屋根面の温度を上げる代わりにお湯を沸かすのですから、同時に建物内の室温の上昇を和らげる作用もしているはずです。
このように屋根面と小屋裏空間の熱容量が大きく、これが蓄熱体となり輻射熱としてじわじわと放熱するわけで、エアコンも効かずとにかく暑いわけです。頭の上に火鉢をのせているようなものです。
これに対処するには前述のように屋根面の熱エネルギーを転用するか、あるいは熱が室内側に伝わりにくいように屋根面で遮熱するしくみが欲しくなります。当社は標準仕様で、高性能断熱材による屋根断熱と同時に屋根構造に通気層を設けて廃熱させる方法を選んでます。
左画像:ネオマフォーム断熱材を垂木下へ打ち上げた様子たくさん画像が残っていそうで割合撮影していない屋根断熱の様子。屋根を構成する垂木という部材間の隙間が通気層になり、屋根面に沿って熱せられた空気が上昇して外へ排出される。煙突と一緒の原理。
ホームページで岡部町「Tさんの家」を見る
左画像:瓦屋根のときに排熱する通気スリット瓦葺きは本来、野地板との間に出来る隙間で通気して熱を逃がしているが、陶器という素材の熱量が大きいため蓄熱材となっている。まさに焼け石だ。逆に冬は暖かく保ってくれるともいえる。これは断熱を考える時必ず陥るジレンマ冬と夏の逆転だ。諸刃の剣なのである。
この設計はコストも手間も掛かるのでローコスト住宅メーカーでは出来ない仕様ですが、理にかなった方法です。現在、しっかりした家づくりを目指すビルダーではこの方法を採用していることが最も多いと思います。ビルダーを見分ける判断材料にもなりますので、営業マンさんに尋ねてみるといいですよ。
「屋根の断熱のしくみはどうなってますか?」って。
この質問に明快に答えられない営業マンは勉強不足ですね。
屋根面の断熱材には旭化成のネオマフォームを使ってます。
単価は少々張りますが、薄さに比べて断熱性能が高いこと、燃焼時の発生ガスも少なく発火せず炭化すること、丈夫で扱いやすいこと、グラスウールのように湿気を含んで断熱性能が劣化することがないなどの理由で選んでます。屋根面の裏側に通気層を設けるにはうってつけの素材です。
高性能断熱材ネオマフォーム をメーカーのサイトで詳しく調べるまたSE構法を採用した現場では、ポリスチレンフォーム3種をOSB合板でサンドイッチ構造にしたSE−R屋根パネルを使ったりもしています。
それぞれの熱抵抗値を調べてみました。(数値が大きいほど熱を通しにくい)
ちなみに熱伝導率は材料厚みに関わらず材質自体によって決まる数値であるので、断熱材の性能を見る場合には 熱伝導率 ではなく 熱抵抗値 を用いて比較する必要があります。メーカーの表示ではそのへんでトリックを使うので要注意です。
グラスウール断熱材のメーカー「マグ」で調べる素材と熱抵抗値
グラスウール 10K 50mm厚 1.0 (m2・K/W)
グラスウール高性能 24K100mm厚 2.8(m2・K/W)
押出発泡ポリスチレンフォーム(3種)50mm 1.8 (m2・K/W)
ネオマフォーム 25mm厚 1.25(m2・K/W)
このようにネオマフォームはその薄さに比べ熱抵抗値が非常に大きいのが分かります。
あくまでも適材適所ですが、単純比較であれば高密度グラスウールの厚いものを使った方が断熱パフォーマンスははるかによいことがわかります。気をつけましょう。
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